ローゼンメイデン最終回 |
作者:ID:rK/HRPbG氏 |
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アリスゲームに勝ったのは水銀燈。 nのフィールド内、ローゼンのもとでの生活は幸せなはずだったが、なぜか満たされない。 手に入ったものには興味がないのか、ローゼンの扱いもそっけない。 ふとフィールドの壁に外界の様子が映る。 ただの人形になっても各マスターたちに愛されている真紅、雛苺、翠星石、蒼星石たち…… 水銀燈は悩む。 これが自分の求めた幸せだったのか。 自分は本当にアリスになったのか。 黙って来てしまったが、めぐは今ごろどうしているだろうか。 たまらず飛び出す水銀燈。 それはローゼンに対する裏切り行為であり、許されないことだった…… 「お父様、ごめんなさい──せめてもう一度だけ、あの子の腕の中に」 だが、あの病室に着いてみるともぬけの殻だった。 人形である自分を隠すことも忘れて看護婦を問いただすが、言葉を濁す…… 不安を隠しきれぬままめぐの実家に行き、窓の外から中の様子を見る。 そこには、ひっそりと仏壇に飾られためぐの遺影があった。 泣き崩れる水銀燈。 仕方なく戻ろうとすると、フィールド内の所定の位置にローゼンの姿は無く、 代わりにラプラスの魔が待ち構えていた…… 「どうしてこんな真似をしたのです?ローゼンはお怒りだ。 もう二度と、あなたの顔など見たくないそうですよ」 かと言って外の世界にも、もはや水銀燈の居場所はない。 永遠にひとりぼっちになってしまった── 誰もいない夜の病室で、水銀燈はただ絶望し、うずくまっていた。 もう涙も出ない。 やがてこの病室にも、新しい病人が運ばれてきて、出て行かなければならなくなるだろう。 「そうだ──そうだわ。私には、まだあの子がいるじゃない」 なにか思いついたのか、水銀燈は夕闇を映す空の向こうへ消えていった…… 桜田邸── ジュンは日課である人形の手入れを、その日も行っていた。 真紅と翠星石。 かつてはかしましく喋りたおしていた彼女たちも、今ではただの人形だ。 雛苺は巴の家に引き取られていってここにはいないが、時々遊びに来る。 クシで真紅の髪を梳いていたとき、窓ガラスを割って侵入するものがあった…… 「水銀、燈──」 現れたのは、水銀燈である。 「うふふ、真紅、真紅ぅ、また会えて嬉しいわぁ……」 「お前、何しに来た!もう居なくなったんじゃなかったのか!」 「ちょっと黙ってなさぁい、人間」 ローザミスティカ7つ全ての力を得ている水銀燈に、 ミーディアムとしての力も失ったジュンが太刀打ちできるはずもない。 ジュンは、睨まれただけで動けなくなってしまった。 「うふ、うふふ……好きよ真紅。バラバラに引き裂いても足りないくらい愛しているわ…… もうアナタしかいないのよぉ、また昔みたいに憎しみ会いましょうよぅ、ねえ、真紅ぅ。 ローザミスティカがないと動けないのね?わかったわぁ、返してあげるぅ」 そう言うと、水銀燈は真紅に熱い口付けをした…… そして、真紅は再び動き出した。 「んむっ」 「ずいぶんと熱烈ね。お父様はどうしたの?水銀燈」 「飛び出してきちゃった。だって、アリスって案外、つまんないんですものぉ。 ねえ真紅ぅ、また闘いましょう。もう決着なんて要らないわぁ」 「あら、あなたもやっと『ゲームを楽しむ』って考えが出来るようになったのね。 好きにしたら?闘うことは、生きることだもの」 「わかってもらえて、嬉しいわぁ……じゃあこれも預けとくから、他の連中に返しといてねぇ」 真紅に5つのローザミスティカを手渡して、水銀燈はどこへともなく去っていった。 ──数日後。 桜田家では、アリスゲームが再び始まったらしきことに関して作戦会議が持たれていた。 「イッチゴッジャムゥ〜イッチゴッジャムゥ〜イッチゴあじっのォ〜スッパゲッチィィ〜」 「おバカ苺!なんてコラボレーションをかましやがりますか! 食べ物を粗末にするなと、あれほど口をすっっぱくしてもわからないですかあっ!」 「静かにしろお前ら!ったく作戦会議にも何もなったもんじゃないな……」 「うふふ……」 「何がおかしいんだよ、柏葉」 「だって、またこんなふうにみんな元通りになれる日が来るなんて、思わなかった」 「鬱陶しいだけだよ、毎日毎日ピーチクパーチク……」 「顔が笑ってるわよ、ジュン」 「ふん。……そういえば柏葉、大丈夫なのか?雛苺のほうは」 巴の手には薔薇の指輪があった。雛苺のものだ。 アリスゲームがリセットされたためか、二人は再契約を交わすことが出来た。 「nom!ヒナはもう、昔みたいにおこちゃまじゃないのよ!ぷんぷん」 「大丈夫よ。もう寂しがって泣いたりしないし、加減してくれてる。何ともないわ」 「多少成長したところで、お子ちゃまはお子ちゃまですぅ」 「なにおー!」 「みんなー!花丸ハンバーグ、できたわよー!」 「わーい!久しぶりの花丸はんばーぐなのー!」 「ああ、水銀燈のボケナスに卑怯な手で出し抜かれて以来、 再び味わえる日は来ないものと思っていたですぅ……感激ですぅ」 そこへ現れる、黒い影。 「あら、いい匂いねぇ」 「水銀燈!」 「おいしそうなハンバーグだわぁ。ねえ、私にそれ、ちょうだぁい」 「まあ、ごめんなさい、もうひき肉が残ってなくて……買いに行かないと」 「その必要はないわぁ……ひとのものを取っちゃうから、おいしいんじゃなぁい?」 「変わったわね、水銀燈」 「?」 「昔のあなただったら、この団欒自体をぶち壊しに来ている筈よ。 ……とはいえ、花丸ハンバーグを譲るわけには、いかないわね」 「なの!」 「この戦い、絶対に負けるわけにはいかないですぅ! いくですよ、ちび人間!」 「なんで晩飯ごときで……本当に食い意地張ってるよな、人形のくせに」 「黙って来なさい。行くわよ」 「はいはい」 「ハイは一回よ」 「へーい」 「いい子ね。水銀燈、ここでは戦えないから、nのフィールドに移るわよ」 「なんでもいいわぁ。早く始めましょうよぅ」 「雛苺が行くなら、私も」 「大丈夫か?柏葉」 「伊達に剣道やってないってところ、見せてあげる」 nのフィールドに舞台を移し── 「トゥモエがついてればこわくないのー!覚悟するのよ、水銀燈!」 「今度こそギッタンギッタンにのしてやるですぅ!」 「3対1、あなたに勝ち目はないわ。泣いて謝るなら今のうちよ」 「うふふ……さあ、楽しませてちょうだぁい!!」 再び、戦いが始まった── 「これで良かったのですか、ローゼン」 「アリスはまだ、生まれたばかりだ。 それが成長し、完成するまでにはまだ時間がかかるようだ。 いましばらく待つとしよう。 期待しているぞ、水銀燈……いや、アリス」 |